アートへの「旅路」を共に歩く(川内有緒『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』(集英社、2021)読書感想文)
とにかく面白い、ものすごく面白い本だ。美術鑑賞のイメージが、堅苦しいものから、気軽に楽しめる易しくて豊かなものへと、ゆったりとひらかれていく。
本の感想を書く前に、前置きとして、父との思い出話を書いておきたい。
父は美術を愛していた。経済的な事情で大学にもほとんど行けず、本格的な美術教育を受けるチャンスもなかったようだけれど、さまざまな本を読んで勉強し、母と小さな幼稚園を経営し、書道や工作を子どもたちに教えて生計を立て、私たちを育ててくれた。油絵や版画や陶芸や写真にも挑戦し