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ネッククーラーの進化の系譜

秋葉原を拠点に、アイデアグッズやパソコン周辺機器、面白家電を販売している「サンコー」という会社をご存じでしょうか。

「面白くて役に立つ」をキーワードにユニークな新商品を年間100点以上も発売し、2021年には前年比2倍以上の売上を叩き出して注目を集めている会社です。

6月7日に発売した新書『スキを突く経営 面白家電のサンコーはなぜウケるのか』では、成長の秘密を同社トップの山光博康さんが大公開していますが、ここではその中から、急成長の牽引役となった商品・ネッククーラーシリーズについてのお話を再構成して、連載形式でご紹介しています。今回はその第3回目です。

〈ネッククーラー mini〉


試行錯誤を重ねてきたネッククーラーシリーズ。第2世代からは家電量販店やホームセンターからも「店頭で売りたい」と声が掛かるようになりました。

次の第3世代は「よし勝負をかけよう」と、さらなる改良に取り組みました。まず、重量を前モデルの325gから135gへと大幅に軽量化し、装着感をできるだけ軽減させるようにしました。

また、大人から子供まで使えるよう首の太さに合わせて長さを調整する構造を取り入れたり、電源ケーブルを出す方向を左右に変えられるようにしたり、丸みを帯びた外観形状を採用するなど、あらゆる改良をほどこし、2019年に『ネッククーラーmini』という名称で販売しました。

これは売れました。前モデルの好評を受けて5,000個を作ったのですが、トータルでは1万8,000個を販売したのです。すでに首掛け式ヘッドホン型扇風機がアイデア商品ではなく定番商品になって普及していたから、それより圧倒的に冷えるネッククーラーに注目してもらえたということもあったと思います。

冷却性能も外気温マイナス13℃にアップしていました。でも、この年は早期に開発製造計画に着手したにもかかわらず、またもや人手不足で計画が遅れて6月まで発売がずれこんでしまい、機会損失がありました。
 

〈ネッククーラー Neo〉

それで2020年の第4世代『ネッククーラーNeo』になるわけです。

モデルチェンジを重ねてきて、とてもカッコ良いデザインになったし、冷却性能も外気温マイナス15℃とさらに向上。

2mの落下テストも行ってより頑丈にしただけでなく、IP33の防水・防塵設計とし、汗をかきながらの使用や砂埃が舞う中での使用にも配慮。また、強弱を自動で繰り返すことで冷たさの感覚が麻痺することなく、ひんやり感を維持できる「ゆらぎモード」も新たに搭載しました。さらに何度も繰り返してきた販売の機会損失をしないよう、開発製造計画も念入りに立てて発売に臨んだのです。

当初10万個を製造し、4月に売り出したら、いきなり売れ始めて、すぐに増産を決めました。結局、増産につぐ増産で結局、24万個が売れました。

こうしてネッククーラーは、知られれば知られるほど売れる商品になりました。また、企業や組織で働く人たちに配給される業務用の熱中症対策用品にもなり、大量一括購入をしてくださる法人のお客様が目立って増えてきました。ようやく開発製造の努力が実り、大量販売が可能になったのです。
 

〈ネッククーラー Evo〉

さらに翌2021年モデルとなった第5世代『ネッククーラー Evo』では、ついにバッテリー内蔵型とすることに成功しました。バッテリーは使用時にはそれ自体が発熱しますし、また品質が悪かったり、適切な制御ができないと爆発の危険性もあるものですから、慎重に慎重を重ねて安全な専用バッテリーを開発したのです。これによって電源ケーブルを接続せずワイヤレスで使用できるようになりました。

また、これまではどちらかというと男性的なかっこよさを追求した武骨な外観だったのに対し、ユニセックスなデザインを取り入れることで男女問わず使える外観を目指しました。さらにホールド力を高めることによって多少の動きでは外れにくいように工夫。動きのあるシーンでの使用にもより耐えられるようになりました。


2021年の夏向けに60万個を用意して4月に発売に臨んだところ、発売1か月で32万個を受注するという記録的な売上を達成。その後も多くの受注をいただいた結果、現時点で47万個以上の売上を記録し、サンコー史上最大のヒット商品となったのです。
 

〈ネッククーラー Slim〉

バッテリーを初搭載した前モデルの記録的な大ヒットを受けて開発に臨んだのが第6世代の『ネッククーラーSlim』です。

前モデルは、バッテリーのせいで重くなったこともあってユーザーからは「激しく動くとずれることがある」という声があがりました。
そこで重心位置を見直し、またバッテリーも小型化することによって、よりフィット感を高めています。また、内部構造を大幅に見直し、冷却性能を落とすことなくスリム化することに成功しました。

さらに、排熱が顔に当たらないよう吸排気方向を変更したり、操作ボタンを大型化して軍手やグローブなどをしていても操作しやすいような細かな工夫も加えています。

2022年の4月に発売を開始したばかりの商品ですが、今年は暑くなるのが早いせいか、すでに注文が殺到しており、現時点で10万個以上の受注をいただいている状況です。
 
このように、ネッククーラーはモデルチェンジのたびに、着実に改良して使いやすくしてきました。
次回は、ネッククーラーの開発における問題点について紹介します。
(続く)


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