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#019 インドで暮らすはずが、気づけばアマゾン生活20年【ボリビア】/世界ニホンジン探訪~あなたはどうして海外へ?~

お名前:なつみさん
ご職業:雑貨屋店主
在住地:ルレナバケ(2003年~)
出身地:大阪
なつみさんの運営する雑貨屋さん:
La Cambita lit.link(リットリンク)

憧れのインドに住むはずが、なぜか南米へ

――大学卒業直後にボリビアに行かれたんですよね。どんな学生だったんですか?

もともと旅が好きでした。高校生の時に沢木耕太郎さんの『深夜特急』を読んで、ベタですけど旅にすごい憧れをもって(笑)。でも、いきなりインドはハードル高いじゃないですか。それで、ひとまず語学学校に通って、そのままイギリスの大学に行くことにしたんです。イギリスは英語が公用語だし、ヨーロッパを旅しやすそうだなって。その期間にいろんな国を旅しました。バイトでお金を貯めては旅に出るっていう学生生活でしたね。

――そこからどうしてボリビアへ?

大学3年生の時には旅の経験値もずいぶん貯まって、「よし、インド行ってみるか!」ってノリで、インドを3ヶ月間旅しました。そしたらもうハマっちゃって。「もっといたい! もっといたい!」みたいな。そこで、どうやってインドに住んだらいいんだろうって考えて、もともと国際協力に興味があったので、インド派遣を希望して青年海外協力隊を受けたんです。そしたら全然予想してなかった南米に派遣されるという(笑)。

――それ、大丈夫だったんですか? 断ったりしなかったんですね!

そんなことにならなければ一生行かない場所だったので、むしろ面白そうだなって思ったんです。南米には知識も関心もなかったんですけど、これもなんか運命かな、と。協力隊には2年間っていう期限もあるし、「まったく未知の世界に行かせてもらえるなら、もちろん行きます!」って感じでしたね。

イギリス時代の友人たち(前列左から一人目がなつみさん)

雑貨屋開店のきっかけはおばちゃんたち

――協力隊として、現地では何をしていたんですか?

派遣された場所は、今も住んでいるアマゾン地域のルレナバケという街です。なんと、私が最初の隊員でした。当時の私、23歳の小娘ですよ? それまで協力隊がいなかった場所に、お試しみたいな感じで派遣されて、村の人と一緒に生活向上のプロジェクトを立ち上げるか、そのニーズを調べるみたいな。そんな感じです。

――なかなかのハードモードですね。

ほんとですよね! なにも知らない人がきて、現地の人は「なんなん? なにしにきたん?」って感じで(笑)。私も「どうしよう……とりあえず、現地の人と仲良くならなきゃ」ってことで、いろんな村に行ってそこの人たちと交流してたんです。現地のおばちゃんたちは世話焼きなんで、かわいそうな子が来たってことで、あれ食べなこれ食べなってお世話してくれました(笑)。そしたら徐々に仲良くなって、ある時にものづくりをしているおばちゃんグループに出会ったんです。ヤシの葉とかアマゾンならではの素材を使ってうちわとかカゴとかをつくっていました。
そこで、お土産屋さんを開くことを思いついたんです。じつは、ルレナバケは小さな観光地なんです。『地球の歩き方』とかには載っていない小さな村なんですけど、ジャングルツアーを目的にしたヨーロッパのバックパッカーが結構いたんです。そこにお土産屋さんがあれば、おばちゃんたちがつくったものを売れるし、旅行者も思い出を持ち帰れる。

――なるほど! それが雑貨屋さんのはじまりですね。

はい。でも最初は毎週日曜日に近くの町で開かれる定期市に出品してみようと思いました。そこでは、いろんな村から持ち寄られた野菜や家畜、服や雑貨が売られてるんです。でも、おばちゃんたちに提案しても、みんなやる気がなくて(笑)。「いや、暑いし」とか「子どもいるしな〜」とか言って、全然乗り気じゃないんですよ。「それならもう私がやるよ!」って、率先して市場で出品してみたら、かなり好評でした。でも、ちょうどその時期に2年間の協力隊期間が終わってしまった。

――これからというタイミングですね…

協力隊が終わって、一度は日本に帰るんですけど、3ヶ月後に個人的に現地に戻りました。せっかく2年もいて、言葉もすこし覚えて、コミュニケーションも取れるようになってきたのに、これで帰ってしまったらもったいないと思ったんです。そこで「お店やるよ! さあみんな、つくって!」って感じで、本当にこじんまりとした雑貨屋を始めました。最初は売り物も少ないし、自分で看板をつくったりして、ただの雑貨好きの部屋みたいな感じでしたよ(笑)

協力隊時代にルレナバケの子どもたちと

アマゾンが身近にある生活

――当時の雑貨屋さんではどんなものを売っていたんですか?

うちわとか帽子、小さなキーホルダーや小物入れとか。最初は私が旅行者向けのお土産のアイデアを出して、おばちゃんたちにつくってもらっていました。でも、いざ店を開けてみたら、地元の人や国内の旅行者にも人気が出たんです。というのも、素材にココナッツの殻とかを使ってたんですけど、普段はみんなココナッツの果汁を飲んだら殻なんてポイって捨ててたんですよね。これまで捨てていた素材がものづくりに生かされるってことに、みんなけっこう驚いていました。

――それからずっと雑貨屋さんをメインにやられてきたんですか?

子どもが生まれるまでは雑貨屋がメインでしたね。生まれてからは、小さいお店の空間に子どもを閉じ込めておくのは可哀想だなって思って、スタッフを雇って、すこしずつお店を離れるようになりました。そのタイミングから、アマゾンツアーをする会社でも働くようになったんです。子どもを連れてジャングルに行けるので、楽しいですね!

――ジャングルが身近にある魅力ってなんでしょう?

一番は、自然も人もあるがままってことですね。人間なんてちっぽけなもので、悩みがあっても、大自然の前ではたいしたことがない。そんな当たり前のことに気づけるのが魅力です。実際にボリビアの地元の人たちを見ていると、すごいお気楽なんですよね。「大自然の前でがむしゃらになったところで、しょせん人間なんてちっぽけだ」ということに気づいてる感じがするんですよね。自然に対してありがたみを持つと同時に、怖さも感じて、あるがままに生きるみたいな。結果的に、なんか自然体でいられるんです。

なつみさん運営の雑貨屋「La Cambita」

浸水した道路で魚釣り、雨がやめば踊り出す

――仕事や生活の中で文化の違いを感じることはありますか?

くりかえしになりますが、みんながあまりに楽観的でいつも驚きます。たとえば、ある年に大雨で川が氾濫して、うちの自宅の前の道路も浸水しちゃったんですよ。私は逃げ場もないし、どうしよう〜って困ってた。でも、そこで釣りをしてる人がいたんですよ。「あ、洪水になったら道路で魚を釣るのね」ってびっくりしました。私にその発想はなかった。周りのそういう楽観的な感じに救われることが多いですね。周りのみんなが暗くなってたら私も暗くなってたかもしれませんが、あまりに明るいので救われてます。

――浸水した道路で釣りをする発想は普通できませんね……

ほんとにね。それに洪水のあとは1ヶ月くらい断水してたんですけど、それでもみんな山に行って湧水を汲んで生活してました。それもあんまり気にしてない感じでしたね。みんなお祭りも大好きだから、ちょっと雨が止んだらグチャグチャの道路で音楽かけて踊り出しちゃったりして。いや〜、このメンタルになれたら人生楽しいだろうなって思います。

――人との関わり方で違いを感じることはありますか?

日本人は、困っている時に人に頼るのがちょっと下手な人が多いじゃないですか。私も助けを求めるの下手だなってこっちにきて気付かされました。なぜかというと、ボリビアの人は頼るのがめちゃくちゃ上手なんです。ちょっとお金に困っている時はすぐに人に頼るし、逆に困っている人がいたら助けるのが当たり前。「何かあっても絶対に誰かが助けてくれる」みたいな心強さがあるので、みんな安心感をもって生きてる気がします。
たとえば、誰かが怪我をしたけど治療費がない時は、近所の人が寄付したり、助けに行ったりします。社会のつながりがとても強いです。

――素敵ですね。なつみさん自身、助けられた経験もあるんですか?

たくさんあります。洪水の時は、家が浸水したので力持ちの人に冷蔵庫を2階に運んでもらったり、1ヶ月間他の人の家に住まわせてもらったりとか。とくに、子どもができてお母さんになってからは、人に助けられることが本当に増えました。町中でうちの子が泣いたら、知らないおばちゃんが近寄ってきてあやしてくれたり、私の荷物が多かったら持ってくれたり。日本の友達に「海外で子育て大変じゃない?」って言われることも多いんですけど、むしろ子育てしやすい。ほんとお母さんや子どもに優しい社会だと思います。

お祭りで盛り上がるルレナバケの人々
アマゾンツアーの様子

刺激と癒しを兼ね備えた国

――今後について教えてください

ここでのものづくりや、アマゾンの魅力を継続して発信していきたいと思っています。雑貨はオンラインで販売したり、日本の実家を店舗にして販売したりしてます。アマゾンツアーは、私がこれまで勝手に楽しんでいたアマゾンでの暮らしをみんなに共有していきたいって気持ちで発信しています。コロナ前までは日本人とあまり接点がなかったけど、コロナ禍にオンラインツアーを始めたのをきっかけに、世界中の日本人と関わりが持てて、最近はすごくオンラインの恩恵を受けてますね。

――ボリビアはどんな人におすすめの国ですか?

いつものルーティンから外れたい人におすすめです。刺激と癒し、両方を備えている国だと思うので、これらを求めている人には本当におすすめです。ぜひ遊びにいらしてください。ボリビアでお待ちしてます!

取材:2023年2月
写真提供:なつみさん
※文中の事柄はすべてインタビュイーの発言に基づいたものです

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聞き手

おかけいじゅん
ライター、インタビュアー。
1993年東京生まれ。立命館アジア太平洋大学卒業。高校時代、初の海外渡航をきっかけに東南アジアに関心を持つ。高校卒業後、ミャンマーに住む日本人20人をひとりで探訪。大学在学中、海外在住邦人のネットワークを提供する株式会社ロコタビに入社。同社ではPR・広報を担当。世界中を旅しながら、500人以上の海外在住者と交流する。趣味は、旅先でダラダラ過ごすこと、雑多なテーマで人を探し訪ねること。


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