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#013 世界旅行中に見つけたブルーオーシャン【南アフリカ】/世界ニホンジン探訪~あなたはどうして海外へ?~

お名前:のじさん
ご職業:通訳/英語塾経営
在住地:ダーバン(2013年~)
出身地:北海道
のじさん経営の英語塾:
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9年間の世界旅行

――南アフリカとの出合いを教えてください。

そもそものきっかけは、20歳の時(2004年)に「世界のことをもっと知りたい」という想いで旅に出たことです。結果的に、南アフリカに住み始めたのが29歳。それまでの9年間は海外を旅しながら生活していました。

――9年間も旅をされていたのは、なぜですか?

現地で一定期間生活をして、次の場所へ行く。そんな旅のスタイルだったんです。
当時は短大を卒業したばかりで、貯金した200万円で世界一周することを計画していました。ただ、いざ旅を始めてみると、一カ所に一定期間留まり、働いて生活を営み、友人を作っていく旅の方が、頻繁に国を移動するよりも私に合っていると感じるようになりました。
その結果、タイ、イギリス、アルゼンチンの飲食店や宿で働き、生活しながら旅を続けるようになりました。その過程で出合ったのが南アフリカでした。

――なぜ南アフリカを選んだのでしょうか?

南アフリカは、私にとって仕事のブルーオーシャンだったからです。
南アフリカの前はロンドンに3年間住んでいて、バーで時給2.5ポンド(当時500円前後)のウエイトレス、オフィス街の日本食弁当屋、日本語フリーペーパーのライターなどをして、がむしゃらに働いていました。資金を貯めて、バックパック旅行を続けるためです。
ところが、南アフリカのヨハネスブルグに着いた途端、向こうから仕事が次々に舞い込んで来たんです。「ここでキャリアを積めば、社会人としてキャリアアップできる」と感じ、少しの間南アフリカに住んでみようと思ったんです。

世界一周中ののじさん(右)。モロッコとモーリタニアの国境にて。

「こんなフレンドリーな国ありますか?」

――南アフリカでは具体的にどのようなキャリアを積まれたのでしょうか?

ヨハネスブルグに着いたのは2010年サッカーW杯の時だったので、テレビ局のサッカー関連の取材や中継の仕事をしました。W杯後も市場調査や通訳の仕事が入り、仕事で社会と繋がることが面白くて、のめり込みました。
2013年にはトヨタから東部の都市ダーバンでの通訳のお話をもらい、ふたつ返事で引き受けてダーバンに引っ越しました。「ここで5年働けば、『通訳』って名乗れる!」とおもったんです。結局、そこで7年間務めて、温かくて真面目なトヨタマンに仕事の仕方を叩き込んでいただきました。その頃には、私にとって南アフリカは「ここで骨を埋めたい」と思える国になっていたんです。

――南アフリカの何がそう思わせたんでしょう?

自分らしく、自由でいられるからですね。毎日「幸せーっ!」と思いながら目が覚めます。今日する仕事、今日会う人、今日食べるものにわくわくして、毎日過ごしてます。人がオープンで明るくて笑顔なので、私も笑顔になります。この前、スーパーのレジで店員さんと話していたら、通りすがりの女性に「あなたの笑顔、すごく美しい!」って声をかけてもらったんです。そんなフレンドリーな国ってあります?笑 みんな気軽に声を掛け合って、冗談を言い合っていて、すぐに友だちができます。国によって常識は異なりますが、私には南アフリカの常識が合っているみたいです。

南アフリカの友人たちと。

日本の常識は通用しない

――現在のお仕事について教えてください

通訳とオンラインの英語教室をやりながら、市場調査やテレビのコーディネーター、リサイクル着物の販売なども行っています。中心にあるのは、日本人の海外進出の応援ですね。
通訳は、自動車製造、IT、鉱業、ゲーミングなど、さまざまな業界に関わってます。場所も、南アフリカだけでなくザンビア、マラウィ、エチオピアなどなど。その時に応じて世界中に足を運び、各国で暮らしながら仕事しています。

――仕事で感じる文化の違いはありますか?

日本の常識では理解できないことがたくさんあります。
たとえば、日本人は時間に正確で厳しいですが、こちらは違います。遅刻くらいでは怒らなくなりました。交通網が日本ほど整っていないから、時間通りに来づらいということもありますし、そもそも家に水道も電気もなかったり、いろんな事情があるんです。実際に家に行くと、1つの部屋で10人で寝ていたりするわけです。そうした背景を知っていくと、「遅れたくらいでなんだ」という考えが、自然に身についていくものです。
仕事にとって生産性や効率性は重要な指標ですし、私も大切にしています。ただ、南アフリカに住むようになり、彼らの生活を理解してからは、その価値観も柔軟なものになっていきました。

――生活の中で感じる文化の違いはありますか?

さまざまな背景と文化を持つ人々がひとつの国で暮らす多様性。これが日本との一番大きな違いです。その象徴の一つが、公用語が11言語あることですね。南アフリカは、ズールー族やソト族、ツワナ族などのアフリカ民族の言語が9つあって、英語とオランダ系のアフリカーンス語のヨーロッパ系の言語が2つ公用語としてあるんです。

――その場合、コミュニケーションはどうするんですか?

基本的に、みんな英語を喋ります。買い物や人と話すときはほとんど英語ですね。私は南アフリカで英語が上達しました。
イギリスに住んでいた頃は、「イギリス人みたいに喋らなきゃ」って思って、彼らのアクセントを真似するように話してました。なんだか自分が演劇をしているようで、躊躇することもありました。ただ、こっちはみんな自分のルーツのアクセントで英語を話します。みんなアクセントが違うから、多少聞き取りづらくても、聞く方が耳を傾けることに慣れている。だから私もイギリスに住んでいるときよりポンポン英語が出るようになって、「自分、英語できるじゃん」って気持ちになるんです。この点でもアフリカには感謝してます。

ダーバンの街並み。
ダーバンのビーチ。

赤信号で停まってはいけない

――移住してよかったことはなんですか?

歳とか性別を気にせずに自由な服装でいられること。たとえばこの前、子どものスクールバスを待っているお母さんが道路沿いに立っていたのですが、格好が、短いバスローブに室内用のスリッパ、頭にはシャワーキャップだったんです。それを見たとき「自由でいいな〜」って感じました(笑)

――のじさんも移住して服装に変化はありましたか?

日本にいるときは、化粧をしてないとなんか気まずいっていうか、化粧をした方が礼儀正しいのかなって思ってしまうことがあるんです。ただ、私の住むダーバンはいろんな人が訪れる港町でもあるので、どんなところにどんな格好で行っても、基本的に場違いになることはないんです。

――のじさんの話を聞いていると、南アフリカに行ってみたいと思わされるんですが、一方で犯罪率が高いというデータもありますよね。実際はどうなんですか?

普段の生活ではみんな本当にフレンドリーだし、なんでこんなにいい人たちばかりなのに犯罪が起こるんだろうって感じます。でも、生活に困っている人がいて、犯罪率が高いのは事実です。実際に、移住してからは「夜に車を運転するときは赤信号で停まらない」ことを習慣にしています。

――赤信号で停まらない?……なぜでしょうか。

街灯がないところの赤信号で停まると、ハイジャックに遭うことが多いらしいんです。

――なんと……どうしたらいいんですか?

周りとバックミラーを見ながらゆっくり走るんです。左右から車が来ていなかったら、そのまま停まらないで進んだ方がいいんです。もちろん、明るいところで見通しもよかったら、停まったりするんですが。

――のじさん自身、危険な目にあったことはありますか?

一回だけありますね。これは自分が悪かったんですけど、車を運転してるときに、虹がかかったので、窓をあけてスマホで写真を撮ってたんですよ。そしたら歩いてる人がスマホを盗って、走って逃げた。そのときは、スマホをなくすのが嫌だったので、追いかけたんです。いざ追いついて「スマホ返してよ」って言ったら、ナイフ持ってこっちに向かってきたので、「あ、これは間違えた」と思って、急いで逃げました(笑)。

日本の読者に向けて

――海外に行くか迷っている方にアドバイスがあれば教えてください

世間体や学歴にこだわらないで、好きなことを仕事にして、自由に生きたらいいと思います。海外に行きたいけど、漠然とした恐怖心が障壁になっているなら、それはすごくもったいないと思います。今は時代に合った新しい仕事を自分で作る時代で、レールから外れることを恐れる必要はないと思います。枠からはみ出ないように生きるよりも、枠からはみ出て間口を広げた方がチャンスが広がります。あらゆることには解決策があるので、とにかくやってみたらいい。やって後悔することはないと思うんです。やらなかった後悔よりもやった後悔をたくさんする人生の方が、きっと何倍も楽しい人生になることは、間違いありません。

取材:2023年2月
写真提供:のじさん
※文中の事柄はすべてインタビュイーの発言に基づいたものです

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聞き手

おかけいじゅん
ライター、インタビュアー。
1993年東京生まれ。立命館アジア太平洋大学卒業。高校時代、初の海外渡航をきっかけに東南アジアに関心を持つ。高校卒業後、ミャンマーに住む日本人20人をひとりで探訪。大学在学中、海外在住邦人のネットワークを提供する株式会社ロコタビに入社。同社ではPR・広報を担当。世界中を旅しながら、500人以上の海外在住者と交流する。趣味は、旅先でダラダラ過ごすこと、雑多なテーマで人を探し訪ねること。


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