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#011 カリブ海の刺繍作家【アンティグア・バーブーダ】/世界ニホンジン探訪~あなたはどうして海外へ?~

お名前:ハウエル惇子さん
ご職業:刺繍作家
在住地:セント・メアリー教区(2014年~)
出身地:香川
ギャラリーのホームページ:
https://www.guavadeart.com 
惇子さんのInstagram:
https://www.instagram.com/guavatsukoembroidery
夫のテリルさんのInstagram:https://www.instagram.com/guavadeart/

きっかけはマイアミでのナンパ!?

――アンティグア・バーブーダってどんな国なんですか?

カリブ海にある島国です。位置的には北アメリカと南アメリカの間です。カリブ海にはジャマイカやプエルトリコといったわりと有名な島国があって、その東に無数の小さい島があるんですけど、その中の二つ、アンティグア島とバーブーダ島を合わせて「アンティグア・バーブーダ」。もともとイギリス領土だったので言語は英語、人種で言うと黒人がほとんどですね。南国リゾートとして観光で成り立っている国で、有名人がバカンスでよく訪れます。たとえば、ビル・ゲイツとかはよく船で来るって聞きますね。

アンティグア・バーブーダ(外務省ホームページより)
アンティグア・バーブーダのビーチ。

――アンティグアご出身の旦那さんと結婚されて移り住んだんですよね。出会いをぜひ聞きたいです。

マイアミのバスで声をかけられたのが出会いです。大学3年生のときにアメリカに留学してて、その期間中にマイアミに一人旅に行ったんです。その旅行中のバスで声をかけてきたのがいまの旦那ですね。いわゆるナンパです(笑)。

――すごいですね。どんな感じでナンパされたんですか?

旦那は画家なので、私の気を惹くために車内で絵を描きはじめたんです。私としては「なんか絵描いてるわ」って、その程度の認識でした。ただ、私は左利きなんですけど、彼も左利きで「あ、同じや」って思って見てたんですね。そしたら向こうから「どこ出身なの?」って声をかけてきて、思いのほか会話が弾んだんです。それでそのまま遊びに行って仲よくなったんです。だからもう、本当に偶然ですよね。

就職を辞退してカリブ海へ

――移住された経緯を教えてください

旦那とマイアミで出会ったものの、留学を終えて帰国しました。その後、彼は日本に2回くらい遊びに来てくれたんです。そのとき私は大学4年生で卒業間近。就職も決まってるタイミングでした。そんななか、妊娠が発覚したんです。最初はどうしようか迷って親とも相談していたんですが、最終的には「好きな人との子なら産んだらいいよ」って父親が言ってくれて、彼と結婚して、日本に住むことにしたんです。

――すごい話ですね。最初は日本で暮らして、その後なぜアンティグアへ?

最初は香川の実家に住んでたんですけど、やっぱり旦那が仕事をしづらかったんです。そもそも田舎ですし、彼は日本語も話せない。絵描きのアーティストとして稼ぐには少し環境的に合ってなかったんです。カリブ海の人間なので本当は陽気な旦那が精神的に落ち込んでいく様子をみて、これは嫌だなって思って「アンティグアに行こう」と二人で決断したんです。子どもが8カ月くらいのタイミングだったので、親は「孫に会えなくなる」って最初は怒ってましたけどね(笑)

日本にて、夫のテリルさんと、娘のアディスちゃんと。

刺繍作家へ

――現在のお仕事を教えてください

刺繍作家をしながら、画家の旦那と共に小さなアートギャラリーを経営してます。

――アンティグアで刺繍作家になった経緯を教えてください

私もなにか仕事を手伝えないかなと思ったのがきっかけでした。子どもも幼稚園に行きはじめたときだったので、なにかしたいなと考えていたんです。そんなときに、大学の友達が趣味で刺繍をしていたので、始めてみたんです。そしたら、意外と楽しかった。旦那が絵を描くときにキャンバスを自作するんですけど、そのとき余ったキャンバス生地を使って刺繍をするようになりました。

――いきなり刺繍をはじめるってハードル高くなかったですか?

当時すでに20代後半だったから「いまからはじめてもなあ」って想いはあったんですけど、意外とやってみないとわからないものですね(笑)。後から知ったんですけど、私の祖母も刺繍をやってたみたいで、作品も見たんですけど結構上手なんですよ。それで母が祖母の糸を送ってくれたりしましたね。いまでは、旦那の絵の一部に私の刺繍を加えた絵画と刺繍のミックス作品だったり、刺繍だけの作品、あとはワッペンなどもつくってます。アンティグアでは刺繍をやっている人はほとんどいないので、珍しがられます。

ギャラリーにて。
ハウエル惇子さんの作品①
ハウエル惇子さんの作品②
ハウエル惇子さんの作品③

日本車、そして衝撃のダンス

――移住して驚いたことはありますか?

意外と日本に関連するものが多いことに驚きました。日本人からするとアンティグア・バーブーダって全然知られてないじゃないですか。でも、こっちだと日本のものは結構あるんです。たとえば、アンティグアは水不足なので、24時間いつでも水が出るわけではないんです。そのために日本政府がお金を出して、海水を淡水に変える設備を建てていて、そこには日本の国旗が立てられてる。

――そんなところに日本が……他にはいかがですか?

車は感覚的に9割くらい日本車ですね。たとえば、ゴミ収集車とか日本の青いやつが使われてるので「街をきれいにしましょう。」って書いてあります(笑)。あとは、日本製の猫型バスを買った人が「猫バスツアー」みたいな名前でツアーに使ってて、ユニークだなって思いましたね(笑)

アンティグア・バーブーダで働く、日本製の猫型バス。

――日本と文化の違いはありますか?

ダンスの仕方は衝撃的でした。こっちの人はみんなパーティーが大好き。毎年7月にはカーニバルがあって、それが生き甲斐みたいな人も多いんですけど、そこで踊るダンスが、もうどう見ても〇〇バック…。本当にしてる訳じゃないんだけど、もうそれにしか見えない。それが主流のダンスなので、初めて見たときはもう本当に衝撃的でした。30分間そのスタイルで踊り続けるんですよ。男の人とか欲情しないのかなって思います。

――すごいですね……友人同士でもそれを踊るってことですもんね。

そうです。以前プールパーティーに行ったときに、友達同士が水着でそれを踊ってて、「友達やんな?」って見てました(笑)。ちょっと私は理解できないですけど。でも、こっちの人はいいリズムの音楽が鳴ると踊り出しちゃう。そういう血が流れてるんだなって感じますね。

アンティグア・バーブーダではポピュラーなダンススタイル

名だたるセレブが訪れる観光地

――リゾート地としても有名という話でしたけど、著名人もたくさんくるんですか?

よく来ます。ジョルジオ・アルマーニだったり、ドルチェ&ガッバーナの創業者二人だったり、エリック・クラプトンとかは別荘をアンティグアに持ってますね。

――名だたるメンツですね(笑)。彼らはどんなところに惹かれてると思いますか?

アメリカやイギリスからも近いという地理的な理由もありますし、やっぱり海が綺麗だからですかね。エリック・クラプトンは「アンティグアは唯一時間の流れが遅くて安らげる場所」みたいなことを言ってたみたいです。実際、時間の流れは遅いなと私も思いますね。一年中夏休みみたいな感じですよ。

――惇子さん自身、セレブに会ったこともあるんですか?

ロバート・デニーロに会ったことがあります。彼はもともとアンティグアに投資しているっていうのもあるんですが、2020年ごろに映画の試写会をアンティグアでしてたんです。たまたま私も招待されてたので行ってみたら「本当におるわ」ってなりました(笑)。想像してたよりオーラがないというか、あのクラスになると服装とかもどうでもいいんでしょうね。なんかしわくちゃのスーツにジャケットで、その辺にいるおじちゃんみたいな感じでした。

日本の読者に向けて

――今後について教えてください

最近はニューヨークやロサンゼルスなどの大都市からギャラリーに来たお客さんから「すごいいいね!」って言っていただけることが多いので、アメリカやイギリスとかでポップアップができたらいいなとは思っていますね。日本は物理的に遠くて、現状繋がりも少ないですが、機会があればぜひやってみたいなと思います。

――アンティグアから読者になにか伝えたいことがあれば教えてください。

こっちからみると日本人は働きすぎだなって思うことがあります。まあでも、こっちの人が仕事をしなさすぎるので、日本人の勤勉さを分けてほしいと思うこともありますけどね。バランスですね。あとはやっぱり「まったく違う分野でも、やってみないとわからない」ってことですね。私もまさかアンティグアに移住するとも、そこで刺繍作家になるとも思ってなかったですからね。

取材:2023年2月
写真提供:ハウエル惇子さん
※文中の事柄はすべてインタビュイーの発言に基づいたものです

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聞き手

おかけいじゅん
ライター、インタビュアー。
1993年東京生まれ。立命館アジア太平洋大学卒業。高校時代、初の海外渡航をきっかけに東南アジアに関心を持つ。高校卒業後、ミャンマーに住む日本人20人をひとりで探訪。大学在学中、海外在住邦人のネットワークを提供する株式会社ロコタビに入社。同社ではPR・広報を担当。世界中を旅しながら、500人以上の海外在住者と交流する。趣味は、旅先でダラダラ過ごすこと、雑多なテーマで人を探し訪ねること。

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