マガジンのカバー画像

【連載】みんなが気になる「顔」の話 By 山口真美

30
「顔」や「表情」の謎を研究する心理学者・山口真美さんの連載エッセイ。人間は、他人の顔や表情、さらには自分の顔をつねに気にしていますが、その理由を、山口さん自身が行なっている研究や… もっと読む
運営しているクリエイター

2021年7月の記事一覧

第6話「美人とは何者か」を考える(前編)

心理学者にとって、美人とは「謎」に満ちた存在です。 漫画やドラマなどで、美容整形をしたらまったく別人の超モテモテとなったという話がありますが、そんなことはあるのでしょうか。誰もが羨むような、そして誰もが共通して「美人だ!」と納得するような人は、この世に存在するのでしょうか。 昭和の時代であれば「吉永小百合」など、日本人の多くが認める美人像が思い浮かびます。しかし時代は変わり、令和の今日、美人像も多様となっているように思います。 かつての吉永小百合さんのように、日本人の誰

第6話「美人とは何者か」を考える(後編)

ここまでの話 人々が「美人」や「ハンサム」と思うのは、いったいどういう特徴をもっているのか? この問題について、心理学者たちはさまざまなアプローチをしてきました。 そこでクローズアップされたのは男性の「顔の横幅」です。 美人=魅力だとすれば、メスにとってオスの魅力とはどこにあるのかといえば、やはり健康で強い子どもを残せそうな相手であることが第一条件にあるはずで、オスはそうしたメスの感じる「魅力」を発するために強さを演出するはず。 その点、顔が大きくて立派であることは、体の大

第7話 眉が表わす「時代の雰囲気」

眉があるのは、生物の中では人だけです。 本来はチンパンジーやボノボのように顔全体に毛があったはずのホモ・サピエンスですが、進化の過程で顔から毛が失われていきます。眉だけに毛が残った理由は、目に汗が入るのを避けるためだとか。 私の記憶が正しければ、これは顔学会会長だった人類学の故・香原志勢(こうはら・ゆきなり)先生から聞いた話だったと思います。 しかし、汗が目に入らないようにするという目的であるとすれば、眉は他の動物にもあっていいはず。人にだけなぜ眉があるのかは、進化的な観