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【連載】みんなが気になる「顔」の話 By 山口真美

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「顔」や「表情」の謎を研究する心理学者・山口真美さんの連載エッセイ。人間は、他人の顔や表情、さらには自分の顔をつねに気にしていますが、その理由を、山口さん自身が行なっている研究や…
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#発達心理学

新連載『みんなが気になる「顔」の話』始まります!

こんにちは、集英社インターナショナル・編集者のMSと申します。 いきなりですが、コンピュータの世界では「インターフェース」という言葉がよく使われるのはご存じですよね。 インターフェースとはコンピュータと人間が接触する「境界面」のこと。 たとえばディスプレイもそうですし、キーボードやマウスなども典型的なインターフェースですね。最近ではマイクやカメラも一般的なインターフェースになりつつあります(Zoom会議など)。 スマホなどでは画面そのものが出力と入力の両方の役割を果たし

第1回 日本人の「マスク好き」と子育ての関係を考えてみる。

昔から「口元を隠す」文化があるせいで、日本人はマスクに抵抗がないが、欧米人にとっては口元こそ「表情」の基本。その傾向の違いは赤ちゃん時代から、実は始まっている──中央大学で「顔」を研究する山口真美さんは、その謎に挑んでいる心理学者。 山口さんによると、「マスクを着けての育児」は要注意なのだとか。それはなぜなのか。 新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)が蔓延してから、マスクに振りまわされる生活が続いています。思い起こせば去年の春から、人々はマスクにピリピリしていました

第13回 日本人はいつから「日本人」になるのか(前編)

日本人はなぜ「R」と「L」の聞き分けができないのか この日本語の文章を読んでいる読者のほとんどは日本人だと思います。 では、その私たちはいつから日本人になったと言えるのでしょうか? ちなみに、ここでいう「日本人」とは、日本人独特の顔形や姿(肌の色なども含む)を示す単語ではありません。国籍も関係ありません。日本人らしい〝ふるまい〟をする人たちのことを指します。もっと今どきの言葉を使えば、「日本人らしいメンタル」を持った人たちとも言えるでしょう。 たとえば日本人の典型的な特徴

第13回 日本人はいつから「日本人」になるのか(後編)

〈前編から続く〉 なぜ日本と欧米を比較対照するのかさて、そこでこの連載の第1回を思い起こしてください。 相手の表情を見る際に日本人は目元に注目するのに対し、欧米人は口元に注目する──この違いはやはり生後1年前後で見られたことをお話しました。これもまた、赤ちゃんがそれぞれの社会に適応しようとして起きる変化と言えるわけです。 ところで、読者の中には「こうした研究はなぜ、いつも日本人と欧米人を比較するのか」と疑問を感じる人もあるでしょう。「白人コンプレックスでもあるんじゃない

第14回 記憶の中の顔(後編)

〈前編から続く〉 人が記憶できる顔の数は最大、何人?身体から切り離された顔は、ある意味で身体よりも“名前”に近いものなのかもしれません。しかしながら顔は名前と決定的に違います。中でも、記憶の仕方と記憶の量に大きな違いがあるのです。 たとえば人が記憶できる顔の数は、記憶できる名前の数をはるかに超えます。名前は出ないけれど知っている顔がたくさんあることは、誰もがなんとなく感じていることでしょう。しかしいったいどれくらいの数が記憶できるかは、長年の謎でした。 メディアを通じて