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【連載】みんなが気になる「顔」の話 By 山口真美

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「顔」や「表情」の謎を研究する心理学者・山口真美さんの連載エッセイ。人間は、他人の顔や表情、さらには自分の顔をつねに気にしていますが、その理由を、山口さん自身が行なっている研究や… もっと読む
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#美容整形

新連載『みんなが気になる「顔」の話』始まります!

こんにちは、集英社インターナショナル・編集者のMSと申します。 いきなりですが、コンピュータの世界では「インターフェース」という言葉がよく使われるのはご存じですよね。 インターフェースとはコンピュータと人間が接触する「境界面」のこと。 たとえばディスプレイもそうですし、キーボードやマウスなども典型的なインターフェースですね。最近ではマイクやカメラも一般的なインターフェースになりつつあります(Zoom会議など)。 スマホなどでは画面そのものが出力と入力の両方の役割を果たし

第5回 表情は伝染するか(前編)

美容整形で使う「ボトックス」が、コロンビア大学で行なわれた、ある心理学の実験で使われたことがあります。心理学者は時として奇抜な実験を考えますが、これには驚きました。 ボトックスとはボツリヌス菌から抽出されたタンパク質の一種ボツリヌストキシンを注射し、目尻や眉・額の皺【しわ】を改善するというもの。注射の効果は4ヶ月から6ヶ月くらい持続するそうで、メスを使わない美容整形として有名です。 このボトックスを、美容のためではなくて、顔を麻痺させる道具として実験に使っているのです。 ヒ

第5回 表情は伝染するか(後編)

(前回のあらすじ) 皺取りに使われる、ボトックス注射には顔面麻痺を一時的に作り出す作用があります。 この注射を使って、喜びの表情や怒りの表情を作れないようにしたら、喜怒哀楽の感情も消えてなくなるのかという実験が行なわれました。しかし、その実験は見事に失敗に終わりました。 「愉しいから笑うのではない。笑うから愉しいのだ」という仮説はこれで否定されました。表情が作れなくても、喜びや怒りの感情は消えてなくならないのです。 ですが、顔面麻痺などで無表情になったり、パーキンソン病になっ

第6話「美人とは何者か」を考える(前編)

心理学者にとって、美人とは「謎」に満ちた存在です。 漫画やドラマなどで、美容整形をしたらまったく別人の超モテモテとなったという話がありますが、そんなことはあるのでしょうか。誰もが羨むような、そして誰もが共通して「美人だ!」と納得するような人は、この世に存在するのでしょうか。 昭和の時代であれば「吉永小百合」など、日本人の多くが認める美人像が思い浮かびます。しかし時代は変わり、令和の今日、美人像も多様となっているように思います。 かつての吉永小百合さんのように、日本人の誰

第6話「美人とは何者か」を考える(後編)

ここまでの話 人々が「美人」や「ハンサム」と思うのは、いったいどういう特徴をもっているのか? この問題について、心理学者たちはさまざまなアプローチをしてきました。 そこでクローズアップされたのは男性の「顔の横幅」です。 美人=魅力だとすれば、メスにとってオスの魅力とはどこにあるのかといえば、やはり健康で強い子どもを残せそうな相手であることが第一条件にあるはずで、オスはそうしたメスの感じる「魅力」を発するために強さを演出するはず。 その点、顔が大きくて立派であることは、体の大