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ライバル商品といかに差別化するのか?

秋葉原を拠点に、アイデアグッズやパソコン周辺機器、面白家電を販売している「サンコー」という会社をご存じでしょうか。「面白くて役に立つ」をキーワードにユニークな新商品を年間100点以上も発売し、2021年には前年比2倍以上の売上を叩き出して注目を集めている会社です。

6月7日に発売した新書『スキを突く経営 面白家電のサンコーはなぜウケるのか』では、成長の秘密を同社トップの山光博康氏が大公開していますが、ここではその中から、急成長の牽引役となった商品・ネッククーラーシリーズについてのお話を再構成して、連載形式でご紹介しています。今回はその最終回(5回目)です。

〈ライバル商品との熾烈な競争〉

サンコーの代表的な商品になったロングセラーのネッククーラーは、あらゆる意味で今日のサンコーを象徴する商品になりました。

熱中症を予防するために体の一部を冷やす商品は、保冷剤を装着したり、大掛かりな水冷式のクールベストなどが昔からありましたが、ネッククーラーのように小型軽量の電気製品はなかったと思います。

したがってネッククーラーは発明的な商品ですが、意匠登録をするだけで特許を取得していません。正確に言えば、していないのではなく取得できなかったのですが、いま思えば、もし特許を取得できたとしても安くない経費がかかるし時間もかかります。
そんなことをしているよりは、どんどん新しいアイデアを出して、性能やデザインをますます充実させていく方がはるかに重要です。

しかし商品というものは、人気が出て売れ行きを伸ばせば、必ずライバル商品が現れてきます。そこから競争が始まる。商品アイデアにしても販売アイデアにしても、全面的な切磋琢磨をせざるを得ません。

この競争では、先発のオリジナル商品が売り勝てるという保証がありません。後発のライバルに追い越されてしまうことも少なくないことはみなさんもご存じのとおりです。

そのような厳しい競争になりますが、それは市場経済をやっているかぎりにおいて絶対に避けられませんから、文句を言わずに引き受けるしかありません。競争の勝ち負けは、お客様が決めることですし、敗北の原因は常に自分たちにあります。相手が強かったとか運が悪かったと敗北を分析しているようでは、いつまでたっても勝てないと思います。

人生にせよビジネスにせよ、勝負はいつも一発勝負ではなく、リーグ戦ですから、勝ったり負けたりして勝負を展開していくものです。だから大切なのは負けたときにクールに分析することだと私は思います。負けを自覚し、その敗北の原因は自分たちにあったという視点で分析しておかなければ、二度と勝てないとさえ思います。

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〈大手メーカーの脅威〉

ネッククーラーが大いに売れ始めたとき、同じようなコンセプトのライバル商品がさっそく登場してきました。

このライバル商品は、私たちのネッククーラーによく似たコンセプトとスタイルだったので、私たちは性能と機能とデザインを改良したモデルチェンジで応戦し、圧倒的な優勢を保つことができました。類似のライバル商品に対しては、先発商品として発想も技術も一歩も二歩も先んじていることで負けずに済みました。

ところが、熱中症予防における電気製品の有効性を大企業が認め、商品を開発して大量投入するようになると、これは気になりました。なにしろ大手の電機メーカーが開発していますから、高機能かつ高性能なものでした。

装着する人の体温をはじめとする体調データを計測して、その体調に応じた体温冷却をしてくるような高機能を持っている。そのためネッククーラーより高価格ですが、大企業や大組織が労働環境の改善のために、設備として納入し作業者に与えるわけですから、パーソナルユースの商品より高価格になっても大量一括購入してもらえます。

このときは大手メーカーによるライバル商品だと意識しつつも、直接の競争相手だと考えない、巻き込まれない戦略をとりました。

ネッククーラーを高機能化することを考えなかったわけではないのですが、高機能にすれば必ず大きく重く、そして高価になります。たしかにこの大手メーカーのライバル商品は、腰にベルトで装着するぐらい大きいものでした。

私たちのネッククーラーの人気は、小さくてシンプルで低価格であることです。この3つの要素を磨けば、高機能で高額のライバル商品と共存しながら、売り上げをさらに拡大していくことができると判断しました。この判断は正解だったのでしょう。実際にその通りの結果になっています。

ネッククーラーシリーズがなかったら、サンコーは家電メーカーになれなかったかもしれません。これからも大切に育てていくべきロングセラー商品だと位置づけています。

5回にわたってお届けした開発秘話もこれで最終回です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。(了)




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