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「つくっちゃえ、みなさん!」

本日、12月7日、木﨑賢治著『プロデュースの基本』が発売されました!
1~5章までの抜粋をご覧くださり、ありがとうございました。
早くも「人生のバイブル」「2回読んだ」など絶賛の声が寄せられている本書の「はじめに」を公開します。
自分でつくるからこそ、見えてくるものがある。
木﨑さんのメッセージは、「つくっちゃえ、みなさん!」です。

はじめに

 この本を書こうとしたとき、小学五年生くらいのときを思い出していました。
 僕は蝶々が好きで、採集から始まり、生態などにも興味を持ったので、アゲハチョウを飼育して観察しました。次第に好奇心が湧いてきて、新しい葉を食べている幼虫と古い葉を食べている幼虫とでは生育がどのように違うかとか、日の当たるところにいる幼虫と日陰の幼虫ではどう違うのかなど、誰にも言わずに密かに観察日記をつけていました。
 ある日、担任の先生が家庭訪問に来たときに、その日記帳を見られてしまいました。「木﨑はおもしろいことを研究してるな。これを全校生徒の前で発表しなさい」と言われて、後日先生が持ってきた模造紙に、観察の成果を書いて発表したことを憶えています。
 中学生になると興味の対象が、蝶からアメリカン・ポップ・ミュージックに変わりました。ビルボードのヒットチャートに興味を引かれ、FEN(現・AFN)ラジオの「TOP20」という番組で最新のアメリカのヒット曲を聴くようになりました。聴いているうちに、こういう曲をつくりたいと思うようになり、アコースティックギターを買ってもらって、訳もわからないままに曲をつくり始めました。そうするといろいろな曲のコード進行はどうなっているのか、構成はどうなっているのかと気になり出して、ポップ・ミュージックの研究が始まりました。

 今回の本は、小学生のころの蝶の観察日記のように、中学のときから密かに研究していた音楽のことを、ひょんなことからみんなの前で発表しなさいと言われて書き始めたものです。
 きっかけは、山下久美子さんの久しぶりのライブでした。僕の隣の席は、「バスルームから愛をこめて」を作曲してもらった亀井登志夫さんでした。亀井さんに渡した詩がどういう経緯で完成したのか、ライブ終わりの楽屋で話したら、亀井さんは「そういうエピソード知らなかった、曲ができるバックグラウンドストーリーっておもしろいよね」と山下久美子さんたちに話していました。
 それを聞いていた、当時一緒に山下さんの制作をしていた福岡智彦さんが、「木﨑さんのプロデュース、独特でおもしろいから本にしたら」と言ったのです。
 僕は体験したエピソードそのものより、自分でつくったからこそ気がついたことや生み出した法則が、ものをつくる人のインスピレーションになればと思い、書き記すことにしました。頭のなかにしかないファイルを四苦八苦しながら、取り出すことになりました。

 自分でも音楽をつくりたいと思ったときから、いろんなことに気づき、発見をしてきました。楽曲そのものから始まり、付随することにも興味を持ち、音楽以外でもさまざまな創造されたもの、そしてそれらをつくる人にも興味は広がっていきました。
 音楽のちょっとした具体的なテクニックや方法論などを発見すると、そこからさらに一段階上の包括的な法則に辿り着き、さらにもっと包括的な哲学みたいなものがわかってきます。
 そうするとその法則は、音楽だけでなく、洋服のデザインにも、レストランをつくることにも、野球チームをつくることにも応用でき、基本はみんな一緒だということに気づきました。
 そうなってくると、ジャンルの違う仕事をしている人と話すことで、より刺激的なインスピレーションを受けることができます。

 僕たちは目標を持つことが大切だと思います。
 いい音楽をつくりたいとか、これまでになかった新しいシステムをつくりたい、人の役に立つ便利な機械をつくりたいなど、目標を実現しようとして生きていると、必要なことが目に見えてきて、心に引っかかってくるはずです。ちっちゃな発見が、より大きな発見へと導いてくれます。その積み重ねで、やがて自分の哲学ができるのだと思います。
 人生は発見の旅です。
 つくっちゃえ、みなさん!

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木﨑賢治『プロデュースの基本』

木﨑賢治(きさき・けんじ)
音楽プロデューサー。1946年、東京都生まれ。東京外国語大学フランス語学科卒業。渡辺音楽出版(株)で、アグネス・チャン、沢田研二、山下久美子、大澤誉志幸、吉川晃司などの制作を手がけ、独立。その後、槇原敬之、トライセラトップス、BUMP OF CHICKENなどのプロデュースをし、数多くのヒット曲を生み出す。(株)ブリッジ代表取締役。銀色夏生との共著に『ものを作るということ』(角川文庫)がある。

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