『ストップ!! ひばりくん!』ができたときのこと
2021年3月30日、新宿LOFT/PLUS ONEにて江口寿史美人画集『彼女』(2021年3月10日発売)の刊行を記念して、江口寿史先生、美術評論家の楠見清先生、タレントのぱいぱいでか美さんによる配信トークイベントを開催しました。
実は、このイベントの前日は江口先生のお誕生日。そこで語られた今年の抱負と、視聴されていた方からの質問にお答えする様子をお届けします。
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江口寿史が今年やりたいこと
ぱいぱいでか美(以下「で」):(完成したライブスケッチの絵を見て)ありがとうございます! すごーい! めっちゃ嬉しい!! これ、伝わってますか? 私の嬉しさ!
楠見清(以下「楠」):すごく良い絵ですよ。
で:わ〜、すごい嬉しいです、ほんとに。ありがとうございます!
江口寿史(以下「江」):いえいえ。
で:ものすごい似てるのに、ものすごい可愛く描いてもらった感じがする(笑)。光栄です、
楠:角度といい表情といい、そして前髪と目のところにすごく線が集中してるんだけど、あとは簡略化されてるあたりもすごく、良い絵だと思います。所要時間、これ何分でした?
江:15分くらい?
で:15分、すごっ! ありがとうございます。大切にさせていただきます。
で:さて、ここでですね、私たちからも今日、ちょっと江口さんにプレゼントがございまして。今日は2021年の3月30日なんですけれども、昨日3月29日が江口さんのお誕生日だったということで。
江:そうそう、前期高齢者というかね、65歳(笑)。
で・楠:お誕生日、おめでとうございま〜す!
江:ありがとうございま〜す! これ顔に、ベシャってするんじゃないですよね。おっ、すごいじゃんこれ!
で:これ、画集『彼女』の表紙がケーキになっております。
江:すごいすごい、ありがとうございます。この歳になったけどね、20年くらいはまだ……30年くらいは生きたいかな(笑)。まだやりたいことあるからな。
で:今年、とくにやりたいこととかありますか?
江:今年ですか? 今年はねぇ……これを言うともう、みんなが笑うんだけど、マンガを描きます(笑)。
で:関係者の方が、みんな笑ってますよ(笑)。でも、言ってくれましたからね!
江:はい。マンガをね、描きますよ。
楠:期待してます!
「彼女」たちの髪型
で:さて、ここからは視聴者のみなさんからの質問に、いろいろ答えていただこうと思います。早速ひとつ目の質問。
質問1:
「以前と比べて、ボブなど髪が短い女の子が増えてきているように感じます。先ちゃん(江口寿史)の趣向の変化だったりするのでしょうか?」
江:ボブは前から多いと思うんだけど、そうですね……まぁ描きやすいってのはあるな(笑)。
髪の流れをじっくり描きたいなと思う時があって、ロングヘアの女性を描くのも好きなんです。ボブの場合はわりと記号的に、ベタにしちゃったりするんですけど。そういう意思や気分の違いかな。
あと、デザインっぽいというか、簡略化したテーマのときにボブが多い気がしますけどね。
で:じゃあ江口さんの好みの変化というよりは……
江:好みっていうか、全部好きですからね、女の人。
で・楠:(笑)。
で:いや、素晴らしいなあと思います。女性からしたら一番嬉しい(笑)。
江:僕の好きな林静一さんも「ボブしか描かない」っていうくらいの人だったからね。
あの時代で言うと、おかっぱだよね。その横顔とか、常に林静一さんのイメージは頭にあるんですよね。なので、「林静一さんから抜けよう」みたいな。
で:いま「こういう女性を描いてみたい」ってありますか?
江:僕はインスタで、好きな絵描きを有名無名問わずフォローしてるんですけど、素人の女性もよく見てるんですよ。
そっちの方が、インスピレーションが湧く。ファッション雑誌とかのモデルを見るよりは、現実の女の子たちの着こなしとか、そういうのを見てますね。そのうち、「あ、この子描きたい」っていう気持ちが湧いてきますね。
で:じゃあもしかしたら、知らないあいだに江口さんに描いてもらってる人がいるかも?
江:そうだね。街を歩いてても、いますよね。「あ、いまの感じ、描きたい」みたいな。
突然の創作意欲
質問2:
「『すすめ!! パイレーツ』以来のファンですが、美少女野球ギャグマンガの読み切り作品を描く予定はないでしょうか?」
江:ありません。ありませんが、野球のユニフォームを着たイラストを何点か描いてますけど、あれは日本の全球団を描いてみたいですね。いまんとこ4球団しか描いてないんで、あと8球団。
で:載ってますもんね、こちらにも。ユニフォーム着た女の子ってなんでこんなに可愛いんですかね〜?
江:ね。ユニフォームが好きでね、昔から。あ、5球団描いてるぞ。じゃああと7球団。
で:作品を描く予定はないですか、っていうことですけども。
江:そういう仕事があれば(笑)。でも最近では、仕事じゃなくても描くときがありますね。昔、全然なかったですけど。
で:それはどういうときに?
江:なんだろう。なんか盛り上がってくるときがあるんですよ、自分のなかで。
楠:創作意欲、ですね。
江:うん。画集『彼女』にはそういうときに描いた、依頼されてない絵も何点か入ってます。
楠:やっぱり違いますか?
江:頼まれて描くほうが出来が良いのは多いんですけど、勝手に描くものでもたまにすごく良いのができます。
江:これとかは、依頼なしの絵ですね。80年代によく描いてた絵を、いまの感じで描いてみたいっていうので描いたものです。
楠:依頼なしで描きたくなる絵って多分、次の作品への呼び水になってるような気がしますね。ある種、「実験として描いてみたい」っていう意欲が、自然に湧くんじゃないですか。
江:「あ、これイケる!」みたいのはありますね。
ひばりくんはどこからきたのか
質問3:
「ひばり君は、モデルがいるのですか? それとも江口先生の頭に突如現れたのでしょうか?」
江:ひばり君は突如、現れましたね。それこそ当時落書きしてて、「あ、次、この子で行こう」みたいな感じでした。そういうとき、あります。
『ストップ!! ひばりくん!』は第一話のネームも、喫茶店で30分くらいでできたんですよ。ほかの皆さんにも聞きましたけど、そういうのってあるみたいです。「降りてきた!」みたいなのが。
楠:落書きの絵から始まったってことは、女装男子っていう設定は後からついてきたんですか?
江:いや、当時はラブコメが流行ってたんだよ。
ギャグは王道に対するカウンターなので、当時流行ってたラブコメを茶化そうっていうか。嫌なラブコメを描こうと思ったの(笑)。
相手を男にしたら困るだろう、っていうね。さらにその男の子が可愛かったら本当に困るだろうな、っていう。そういう発想ですね。
で:私みたいに絵を描かない側の人間からしたら「突如浮かぶ」とか「降りてくる」みたいな感覚が、具体的にどういうものなんだろうっていうのが、すごい気になります。
江:それがわかればね(笑)。ミュージシャンの方でもさ、「すごい名曲が10分でできた」とか、よく聞くじゃないですか。そういうのは、何回かあるんじゃないですかね。
あんまりイジり回してイジり回してっていうよりは、ポーンとできた方が良い場合もあるしね。わかんないですね。
で:確かに。それをコントロールできたら、最強ですもんね。
江:いつもそれができたら最高ですけどね。
――つづきはこちらからどうぞ
『彼女』江口寿史
初収録作品40点以上を含む350点以上の作品を、
女性イラストのみで構成した美人画集!
定価:4,950円(10%税込)
仕様:B5判オールカラー 288ページ
ISBN: 978-4-7976-7385-2