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【連載】みんなが気になる「顔」の話 By 山口真美

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「顔」や「表情」の謎を研究する心理学者・山口真美さんの連載エッセイ。人間は、他人の顔や表情、さらには自分の顔をつねに気にしていますが、その理由を、山口さん自身が行なっている研究や… もっと読む
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#相貌失認

新連載『みんなが気になる「顔」の話』始まります!

こんにちは、集英社インターナショナル・編集者のMSと申します。 いきなりですが、コンピュータの世界では「インターフェース」という言葉がよく使われるのはご存じですよね。 インターフェースとはコンピュータと人間が接触する「境界面」のこと。 たとえばディスプレイもそうですし、キーボードやマウスなども典型的なインターフェースですね。最近ではマイクやカメラも一般的なインターフェースになりつつあります(Zoom会議など)。 スマホなどでは画面そのものが出力と入力の両方の役割を果たし

第8話 「嫁の人相が読めない」(前編)

「お嫁さんの人相が読めなくなって、困っているのですが・・・」 都内の大学病院の心療内科に、そんな問題を抱えるご婦人がやってきたそうです。 この話を聞いた心理師さんたちは、 「人相って、いったい何のことを言っているのかしら?」 「もしかして、元占い師の患者さんなのかしら?」 と頭を抱えていたそうです。 しかし詳しく話を聞いてみると、ご婦人はごく普通の主婦で、同居する息子のお嫁さんの表情が読めなくなって困っていたことがわかりました。詳しく検査したところ、顔を処理する脳の箇所に

第8話 「嫁の人相が読めない」(後編)

(前編はこちら) 「この人、ママじゃない!」と泣き出す赤ちゃん わかりやすい特徴で顔を覚えるのは、生後2ヶ月くらいの赤ちゃんも同じです。ただし赤ちゃんの場合は、初対面の軽い関係の人だけではなく、最も親しいお母さんの顔の記憶もこのやり方です。 この時期の赤ちゃんを持つお母さんから、こんなエピソードを聞きました。たとえば、ふだんは眼鏡をかけているお母さんが、子どもとお風呂に入ろうと眼鏡を外したところ、泣きだされてしまった。 あるいは、久しぶりにイメージチェンジをしようと髪を短

最終回 自分の顔はわからない(前編)

鏡の中は別世界「鏡よ、鏡よ、鏡さん。この世で一番美しいのは誰?」 白雪姫の物語で、継母のお后は毎日、自分の顔を鏡で眺めてはその美貌を確かめます。 いつの時代も鏡は人を魅了するようで、鏡に映る自分の姿に耽溺しすぎると、鏡なくしては生きていけない「鏡中毒」、「鏡依存」になってしまうこともあるのかもしれません。 これは鏡中毒とは違いますが、アルツハイマー型認知症患者に、「鏡現象」という症状がみられるそうです。 鏡現象とは、鏡に映った自分に話しかけたり、物を手渡そうとしたりするな