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#003「ダンスをやっててよかった」と思わせてくれた国【フィリピン】/世界ニホンジン探訪~あなたはどうして海外へ?~

お名前:Asaminさん
ご職業:ダンスインストラクター
在住地:マニラ
出身地:福岡県
Asaminsさん運営のダンススクール:
https://linkbio.co/LIVDanceacademy-en

「ディープなところ」を探して

――日本でもダンスインストラクターをしてたんですか?
 
福岡でダンサーとインストラクターをしてました。高校の頃からダンスをはじめて、「いつか仕事になったらいいな」と想いながら続けていたんです。ただ、当時はダンスで食べていけるような時代でもなかった。子どももすごい好きなので、最初は保育士として就職したんです。
 
――保育士さんだったんですね! そこからダンスを再開した理由は?
 
やっぱり諦められなかったんだと思います。ダンサーの仲間たちがクラブに踊りに行くのがなんか悔しくて、結局1年で保育士をやめて、ガチでやり始めたんです(笑)。そこからずっと続けてたら、23歳だったかな? インストラクターの話をもらったり、バスケのBリーグのチアダンサーをしたりと、がっつりダンスを仕事にするようになったんです。
 
――すごいですね。でもそこからどうしてフィリピンへ?
 
移住したのはマニラですが、きっかけは2011年のセブ島旅行でした。20代の頃からめっちゃ海が好きで、ハワイとかグアムに行きまくってたんですけど、なんか飽きてきちゃって。「ディープなところないかな〜」って思ってたら、旅行会社の人にセブ島を教えてもらったんです。行ってみたら、本当にめっちゃ田舎で時の流れもゆっくり。もう、海と空と私! みたいな(笑)。そのときから「あ〜いつかこんな所に住めたらいいな」って漠然と思いはじめてたんです。

セブ島の海と空

言葉がなくてもダンスで通じ合った

――「住みたい」から「住む」に至った経緯を教えてください。
 
あるとき、旦那が「転職しようかな」って言い出して、それならフィリピンに移住しちゃう? ってなったんです。
 
――なります?(笑)移住ってハードル高くなかったですか?
 
合わなかったら帰ってくればいいですから(笑)。私もそれまでフリーランスで仕事を選んで獲得する人生を歩んでいたから、なにか「やりたい!」って思ったら挑戦したくなる。そういうのが好きなんです。まあ、ノリですよね(笑)
 
――たしかに、帰ってくればいいですもんね。でもそのまま住み続けた理由はなんですか?
 
今年で10年目になりますけど、もちろん当初はこんなに長くいるとは思ってなかった。でも理由は多分シンプルなんですよね。笑顔が増えるんです。毎日生活してて、お店にいったり、人にすれ違ったりするとき、なぜか日本にいるときより笑顔になることが多い。シンプルです。あとは、フィリピンにきて「ダンスをやっててよかった」って思ったんです。
 
――なんと! 詳しく聞きたいです!
 
こっちにきてすぐに、いろんなダンススタジオに素人のフリして行ったら、現地のみんなに「あなた誰!?」「あさみはいいダンサー!!」とどこのスタジオにいっても声をかけてくれるようになったんです。それまでダンスは自分が好きで続けてきたものだったけど、こうして異国の地で言葉も使わずに通じ合えるものになっていたのが、すごいありがたいというか。全然英語も話せなかったんですけど、「あさみ、レッスンしにきてよ!」ってフィーリングだけで私を求めてくれる感じが、まじでダンスやっててよかったって改めて思わされたんです。この体験はやっぱり大きかった気がしますね。

フィリピンのダンサー仲間たち

フィリピンのノリ×日本のレッスン=??

――フィリピンでダンスインストラクターとしての仕事をはじめた理由は?
 
フィリピン人が元々持っているノリみたいなものと、日本の基礎から積み上げていくレッスンをミックスさせたいと思ったんです。こっちの人ってラテンっぽいというか、センスとノリで踊れちゃう人が多いんですけど、逆に基礎練習をすることが少ないんです。こっちはまだダンサーだけで生活ができる人はごくわずか。でも私が日本で教えてきた基礎をフィリピン人にも知ってもらえたらもっとダンススキルが伸びて、海外でフィリピン人ダンサーが起用されたり、インストラクター全体の質が上がるなって思ったんです。
 
――指導も日本とは結構違うんですね。
 
たとえば、日本だとストレッチもしっかりやって、基礎練習も色々するんですけど、フィリピンってちゃちゃってストレッチしたらすぐ踊る感じだったんです。でも、インストラクターの仕事って生徒を育てることだから、「基礎をやるのが大事なんだよ」って私が言いはじめたんです。そしたらいろんなスタジオで私のストレッチが勝手に広まっていって(笑)。徐々にダンサーの間でも「ただ踊る」から「基礎をとりいれる」というふうに認知が広がっていったんです。
 
――すごい! でもこれまでなかったものを持ち込むって難しくなかったですか?
 
最初は、「なにこれ? できん」とか、筋トレに対して「そもそもダンスに必要なん?」みたいな感じにはなってました(笑)。でも腹筋がないとターンのキレもメリハリも出ない。そうしたギャップを私自身を見本に教えていったんです。そしたら「あさみのスキルはこういうトレーニングをしてきたからあるんだ」って気づいてくれて、少しずつトレーニングの重要性も浸透していったんです。

ダンスレッスンの様子

国が認めるほどの浪費家たち

――移住してから感じる文化の違いはありますか?
 
浪費家が多くて驚きました。フィリピン人は給料をもらったらすぐ使っちゃうんです。給料日の後のスーパーのレジはありえないくらい長蛇の列ができて、30分くらい並んだりします。もう、給料もらったらほぼほぼ使っちゃうみたいな。もうこれはあるあるですね。
 
――それ途中でお金なくなりませんか?(笑)
 
そうそう。みんな給料日前になるとほぼお金がないんです。私も気になって「どうやって生活してるの?」ってきいたら「バナナがあるからオッケーだよ!」みたいな。ハンパないですよ。笑っちゃいますよね。そうかバナナさえあれば大丈夫なのかって。みんな今が楽しければいいじゃないって雰囲気を感じます。別にお金がなくなってもネガティブにもならないし、バナナを食べてれば結局乗り切れますから。
 
――南国つよいな〜。給料は月末?
 
そこが面白くて、すぐ使っちゃうのはもう国民性だから、国が「給料は2回に分けて渡してください」って決まりをつくってるんですよ。だから15日と月末にもらうような感じ。国がそれを認めてるのが面白いですよね(笑)。

ワンちゃんもモールで涼む国

――生活の中で日本との違いを感じることはありますか?
 
フィリピンはペットにフレンドリーなんです。私もワンちゃんを飼ってるんですけど、高級ブランドが入っているような百貨店やモールに普通にワンちゃんと一緒に入って大丈夫なんです。フィリピンの三越では高級コスメやバッグ屋さんの横をワンちゃんが散歩するかのように通り過ぎるから、最初は違和感でしたよ(笑)。
 
――なんか可愛いですね。散歩とかでいくんですか?
 
そうですね。そもそもフィリピン人はモールに行くことが多い。常に暑い国だから涼しい所を求めてみんなモールにいくんです。とくに土日とかは家にいるとエアコンをずっとかけないといけないから、ワンちゃんも連れていく。レストランでも大体テラス席があるんで、一緒にご飯も食べられるんですよね。店員も慣れてるから対応もいい。以前私もワンちゃんとレストランでご飯食べてたら、店員に「ワンコ用の椅子を持ってくるね」って言われて、ベビー用の椅子を持ってきてくれました(笑)。日本だとあまりないですよね。日本で飼うよりもずっと一緒にいられるので、飼いやすいのかなって思います。

日本の読者に向けて

――今後について教えてください。
 
フィリピンのBGC(ボニファシオ・グローバル・シティ)で日系初のダンススタジオをオープンすることにしたんです(※現在営業中、詳細は冒頭のリンクから)。おそらくBGC初のダンススタジオになると思います。これまではフリーランスとして教えてきましたが、次はみんなが集まれるような「場」もつくりたいと思ってるんです。最終的には日本とフィリピンがダンスを通じて繋がっていくような場所、コミュニティにしていきたいと思ってます。もう今からいろんな国の人がダンスを通して交流してる雰囲気を想像するだけでにニヤけてます(笑)

BGCの夜景と一緒に(右から2人目がAsaminさん)

――最後に、フィリピンに行くことを検討している方へアドバイスがあれば教えてください。
 
とにかくきてほしい!私は自分で行動してみる、体験してみるってすごい大きいと思ってるんです。最近フィリピンはいろんなニュースでよくないイメージを持ってる人もいると思うけど(笑)、イメージと実際に自分が体験した出来事ってギャップがあるじゃないですか。いまネット社会だし、テレビでもいっぱい情報見れるけど、経験したことがリアルだと思うんです。情報やイメージだけで「行かない」っていうのは本当にもったいないので、本当に来てほしいです!(笑)

取材:2023年2月
写真提供:Asaminさん
※文中の事柄はすべてインタビュイーの発言に基づいたものです

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聞き手

おかけいじゅん
ライター、インタビュアー。
1993年東京生まれ。立命館アジア太平洋大学卒業。高校時代、初の海外渡航をきっかけに東南アジアに関心を持つ。高校卒業後、ミャンマーに住む日本人20人をひとりで探訪。大学在学中、海外在住邦人のネットワークを提供する株式会社ロコタビに入社。同社ではPR・広報を担当。世界中を旅しながら、500人以上の海外在住者と交流する。趣味は、旅先でダラダラ過ごすこと、雑多なテーマで人を探し訪ねること。


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