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数々の悲劇を引き起こした現代優生学を知る

「優秀な人間の血統のみを次世代に継承し、劣った者たちの血筋は断絶させるか。もしくは有益な人間になるよう改良する」――ナチスの思想にも大きな影響を与えた優生学。

遺伝子技術をはじめとした科学の発達や、経済不況、さらにはコロナ禍も加わって、現在ふたたび広がりを見せていると言われています。

生物学者の池田清彦さんによる『「現代優生学」の脅威』はその現状を知るための一冊。制作の舞台裏を担当編集者に聞きました。

命の価値が、区分されている

企画を立ち上げた当時、生産性が高いか低いかで「価値のある命」と「そうではない命」を区分するような思想が、社会に浸透してきているように感じられました。

そうした思想が引き起こした犯罪の極みと言うべき事件が、2016年7月26日に神奈川県相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で起こった45人殺傷事件です。

明らかに優生学的な傾向をもつ考えが、社会のさまざまな領域で顕現しつつあると感じ、そうした感想を池田清彦先生にお伝えしたところ、先生は優生学の歴史を最先端の生物学研究を交えながら丁寧に教えてくださいました。それが非常に興味深いお話だったので、執筆をお願いした次第です。


優生学を多角的にとらえる

生物学者で、テレビのコメンテーターとしても人気の池田清彦先生が、優生学の歴史から現代的な風潮までを論じています。

イギリスの哲学者・社会学者スペンサーの社会進化論やナチスの人種政策、日本のハンセン病患者隔離政策などを例にとり、優生学の歴史的な流れを多角的に把握できるのはもちろん、安楽死を巡る問題やゲノム編集など、優生学の現代的な広がり方も知ることができる、入門書として最適の1冊です。

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SNS炎上の火種にも

本書を刊行した少しあとですが、某有名ユーチューバーが、生活保護の受給者やホームレスの人たちを否定する持論を展開し、炎上しました。

経済合理性をもとに、特定の人たちを社会から排除・抹殺することを正当化するのは反社会的行為であり、ヘイトクライムを誘発しかねません。

マジョリティの側にいる人は、まさか自分が排除される側になるとは思ってもいないのでしょう。しかし、次に排除されるのが自分でない保証は、どこにもありません。
優生学の歴史と現状を知り、「命に優劣はない」ことを考えるきっかけになりましたら幸いです。

差別や偏見がどのような悲劇を生むか、歴史と生物学によって学ぶことができる本書。
同じ過ちを繰り返さないために、自分、そして他者の置かれている場所を考えるためのきっかけがここにあります。


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