#002 コロナで失職後、TikTokで60万フォロワー獲得【メキシコ】/世界ニホンジン探訪~あなたはどうして海外へ?~
お名前:Kentaroさん
ご職業:インフルエンサー
在住地:メキシコシティ
出身地:広島県
TikTok:Kentaro | viajemos a Japón🇯🇵 (@kentaroyoneda) | TikTok
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コロナ禍、36歳、無職
――メキシコに来る前はなにをしてたんですか?
ドイツでサルサスクールをしてました。もともと東京でサラリーマンをしてるときに趣味でサルサをやっていて、31歳のときに脱サラしてドイツでサルサのレッスンをはじめたんです。それが結構うまくいって、当時は売り上げが月100万円くらいだったんですけど、そんなときにコロナがきたんです。ダンスのスクールってすごく密だし近距離じゃないですか。室内でのスポーツが禁止になって、完全にやることなくなっちゃったんですよ。
――なかなかキツイですね。そこからどうしてメキシコへ?
当時36歳で無職になって「あーどうしようかな」って感じだった。ただ、ドイツは補助金が結構しっかりしてて、個人事業主に100万円くらい配ったり、昨年の売上の60%くらいも追加でくれたかな? それでお金と時間がちょっとできたんです。そんなときに、友達から「いまメキシコにいるんだけど、部屋あまってるから1ヶ月くらい遊びにおいでよ」って言われたのがきっかけですね。いま考えると、30代で仕事なくて、最悪ですよね(笑)
ご飯を食べる動画がTikTokで大バズり
――そのままメキシコに移住された理由はなんですか?
なんか楽しすぎてそのまま住み着いちゃいました。メキシコに来たのが2月ごろだったんですけど、天気もよくて気温も25度くらいで日本の春みたいな感じなんです。もうそれだけで幸せなんですよね。ドイツはそんなに天気がよくないので、それと比べるとすごく過ごしやすかった。あと、メキシコの人はすごく明るいのと、ドイツに比べて日本に興味を持ってくれる人も多くて、友達もつくりやすかったんですよね。当時は1ヶ月くらい住んだらドイツに帰ろうと思ってたんですけど、帰っても仕事ないし、帰る意味ないじゃないですか。だから、1ヶ月間友達の家に住んだ後に「もうドイツ帰らなくていいや」ってなって、そのまま住み続けることにしたんです。
――でも、暇じゃないですか?(笑)
そうそう。それでTikTokが流行っているし、暇だからやってみようと思ってはじめたんです。でも最初はテーマとか全然わからなくて、とりあえずメキシコのご飯食べてる動画を上げてたんですよ。そしたらあるとき、メキシコで有名なポソレっていうスープを食べてる動画がバズったんです。次の日にはいろんなメディアで「日本人が初めてポソレを食べる動画」みたいな内容で掲載されて、メキシコでも影響力があるメディアにも取り上げてもらったんです。その影響もあって、フォロワー数が3000人くらいから10万人くらいに一気に伸びたんですよね。そこから「メキシコのご飯を食べて『美味しい』って言う日本人」をはじめたんです(笑)。
餅つき動画が1,000万回再生
――いまや総フォロワー60万人以上ですが、具体的にはどんな発信をしているんですか?
最初はご飯を食べてる動画ばっかり載せてたんですけど、だんだん伸びなくなってきたので、「それなら日本文化を発信しよう」と思って、日本とメキシコの違いだったり、現地にある日本食を紹介するテーマに切り替えたんです。そしたらビューンってフォロワーが伸びたんです。日本って人気なんだなって気づかされましたね。それからは「日本について話すメキシコ在住の日本人」っていう感じで、InstagramとTikTokで発信してます。
――日本に関するコンテンツだと、とくに伸びた動画とかってありますか?
日本のトイレがいかに清潔かっていう動画だったり、メキシコシティにある日本食レストランを紹介する動画も伸びていますね。あとは日本の餅つきを紹介する動画をアップしたときは、1,000万回以上再生されました。日本文化への関心の背景には、昔からのアニメ人気と、最近のK-POPブームが後押しになってる気がします。メキシコから見ると日本と韓国って一括りというか、ひとつのアジア文化として捉えられる一面もあるので、K-POPの流行と同時にアジアへの関心が高まっているんじゃないかなと思っています。
――コメントとかで日本との違いを感じることとかありますか?
メキシコの人は思ったらすぐ書き込むイメージがありますね。文章というより絵文字とか笑い顔のマークだけだったりの「反応」が多い。日本人ってコメントで勝とうとしたり、言い負かしたりしようとするシーンがあるじゃないですか。こっちももちろん議論が起きないわけじゃないけど、もっとカジュアルに投稿する感じが多いですね。
メキシコのジェントルマンカルチャー
――文化の違いはありますか?
無限に存在します。動画でも文化の違いを扱うことが多いので、ネタに困らなくて助かってるくらい。あえて一番驚いたことをあげるなら、男性のジェントルマン具合ですかね。たとえば、車のドアの開け閉めとか。メキシコではよく男性が車の反対側までいって女性のためにドアの開け閉めをするんです。ぼくの友達がメキシコ人女性とデートしたとき、車でレストランに着いて、お店に入ろうとしたら、彼女がいなかったらしいんですよ。彼女はまだ車の中で、彼がドアを開けるのを待ってたっていう。すごい話だなって思いましたけど、メキシコ人とデートをするときは、そういう細かいところにも気を配った方がいいのかもしれないですね。個人的には結構めんどくさいと感じちゃいますが(笑)
――ぼくもちょっとできるか不安だな(笑)
もちろん人によりますけどね。トラディショナルな子はそうした気遣いを気にする人もいますが、最近はメキシコでもフェミニズムが広まってきたので、そういう女性はドアも自分で開けますし、お金も割り勘になりますね。ただ、ドアを開けるような気遣いはデートだけじゃなくて、妹だったりお母さんだったり、女性には誰にでもするようなイメージがあるので、女性に対して気遣いをする文化は一定してあるのかなと思います。
――日本だと「男性が奢る/奢らない問題」が定期的に炎上してますが、その点メキシコではどうですか?
やっぱり男性が奢るシーンは多いと思います。たとえば、ご飯食べて飲みに行ってタクシー代まで出すっていうのは自然にありますね。ぼくも最初は奢ることが多いですけど、2回目以降はちょっとなとは思っちゃいますね。でもなかなか言えないですよね(笑)。
「行けたら行く」はやっぱり来ない
――ほかにはどうですか?
逆に似てるなって驚いたのが、遠回しな表現が多いことですね。パーティーの誘いだったりご飯だったり、メキシコの人はほとんど断らないんですよ。そのときに「多分行く」とか「行けたら行く」とかっていう表現をすごい使う。でも実際にはぜんぜん来ない(笑)。日本でもあるあるですよね。その場のノリに合わせるというか。本当にそういう表現が多くて、約束をしても「行きたい行きたい!」って言っておいて当日来ない(笑)。
――たしかに「行けたら行く」はほとんど来ないイメージあるな〜(笑)。
メキシコの人はポジティブな人が多いから、「絶対行くね!」って感じは伝えてくれるんですけど、1ヶ月前に約束して、2週間前に確認して、当日の3時間前くらいに連絡しないと本当に来てくれるかはわからない(笑)
日本の読者に向けて
――今後のご活動について教えてください
いまはインフルエンサー活動の他に、こっちでサルサスクールや飲食店もやってます。これからは日本とメキシコを繋ぐような活動を積極的にしていきたいと思ってます。日本のインフルエンサーや企業とも繋がりながら色んなことをしていきたい。今度「東京マンガSTUDIO」っていう、メキシコで漫画や日本文化を学べる学校をつくるんですが、こうした企画を今後もやっていきたいですね。
――最後に、メキシコから日本へなにか伝えたいことがあれば教えてください
ぼくはそもそも日本でのサラリーマン生活が嫌で嫌でしょうがなくて海外に行きはじめたので、むかしのぼくと同じように人生の意味に葛藤しながら電車に乗って会社に行っている人、抜け出したいと思っている人がもしいるなら、「環境を変えると結構簡単に世界が変わるよ」って伝えたいですね。英語を勉強してからとかじゃなくて、とりあえずどこかに行ってみる。環境をパッと変えてみると、意外となんとかなるもんです。ちなみにぼくはスペイン語が全然話せません。でもメキシコでもなんとかなってます。おすすめはドイツとかメキシコみたいな、英語が片言でもなんとかなる国。アメリカやイギリスだと結構きついけど、英語ネイティブ以外の国だと意外といけます。環境を変えたい方はぜひ検討してほしいなと思います。
取材:2023年2月
写真提供:Kentaroさん
※文中の事柄はすべてインタビュイーの発言に基づいたものです
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聞き手
おかけいじゅん
ライター、インタビュアー。
1993年東京生まれ。立命館アジア太平洋大学卒業。高校時代、初の海外渡航をきっかけに東南アジアに関心を持つ。高校卒業後、ミャンマーに住む日本人20人をひとりで探訪。大学在学中、海外在住邦人のネットワークを提供する株式会社ロコタビに入社。同社ではPR・広報を担当。世界中を旅しながら、500人以上の海外在住者と交流する。趣味は、旅先でダラダラ過ごすこと、雑多なテーマで人を探し訪ねること。