怪獣のことを、生物学者が本気で考えた
「新書は独学の友」フェア、今回ご紹介するのは『怪獣生物学入門』。
著者の倉谷滋さんは形態進化生物学者で、生物のかたちがどのように進化してきたかを専門に研究されています。
そんなプロフェッショナルが、ゴジラ、ガメラといったSF作品に登場する怪獣の姿をどういった視点で見ているのか――怪獣たちへのあふれる愛とともに語っていただいているのが本書です。
制作当時の話を、担当編集者からお伝えします🦖
凝縮された「SFと現実の境界」
季刊誌「kotoba」『ファーブル昆虫記』特集の執筆依頼で、はじめて倉谷 滋先生にお会いした際、特撮やSFの話で盛り上がって、気がつけば陽が傾いていました。
その経緯で、同誌の『ブレードランナー』特集にも寄稿していただいたところ、その原稿の面白いことと言ったら! すぐに「SFと現実の境界」をテーマに書籍企画の相談をしたところ、ほどなく「何冊分?」と思うほどの原稿が積み重ねられました。
本書はその中から怪獣に特化した話をピックアップし、さらに厳選を重ねて絞り込んだものになります。多くを削いで芯まで磨き込むような贅沢な作り方をしたのが、『怪獣生物学入門』です。
フィクションから始める科学
実在しない怪獣を素材にしても科学は成立しますし、むしろエンターテインメントの延長で楽しく科学を学べてしまいます。
『怪獣生物学入門』を片手に、忘れかけている『ゴジラ』シリーズをはじめ、マイナーな『ドゴラ』や『マタンゴ』などなど、レンタルや配信のおかげで鑑賞しやすくなった作品群の中から一本選んで、再生してみましょう。
本書で養われた科学の知識が自らのものとして定着し、作品をより深く味わうための「目」も開眼させてくれるはずです。実在しない生物を通じて考える「新しい科学」を提案する本書は、他にはない、ハマること必至の「新しい独学」を提案します。
あなたの好きな怪獣は登場しているでしょうか?
伝われ、怪獣への愛
倉谷先生の専門領域にとどまらない知識の広さ、あらゆるフィクション作品への敬意、そこから広がる深い考察。
日本のトップに立つ生物学者が本気で怪獣を語ることで、その背後に科学を起点にした豊穣な世界が広がっていることが少しずつ実感できます。
フィクション作品を科学の視点で検証する手法はほかにもありますが、読者をこの気付きへといざなう意味で、本書は他とはまったく異なる機能を果たします。
その説得力を支えるのはSF、とりわけ怪獣に対する倉谷先生の並みならぬ想いです。書き進むにしたがい筆が走り、ほとばしる想いと熱量が上昇していく様が伝わったらうれしいです。
本書が重版された際には、映画『シン・ゴジラ』で監督・特技監督を務めた樋口真嗣さんとのトークショーも開催されました。
倉谷さんの怪獣愛が詰まった一冊。ぜひお手に取ってみてください📕
↓トークショーの様子はこちらからも読めます↓
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