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異邦人のロンドン──移住者たちのトゥルー・ストーリー

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翻訳家・園部哲さん初の著書『異邦人のロンドン』刊行記念の短期連載。 30年以上滞在しているロンドンの街を「移民」の視点から描くこの本には、王室報道ではお目にかかることのできない、… もっと読む
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シティを覗く──『異邦人のロンドン』番外編③

シティを覗く──『異邦人のロンドン』番外編③

 ロンドン通の旅行者、あるいはロンドン在住の人でもサラリーマン以外は乗ったことがないであろう地下鉄がある。その名をウォータールー・アンド・シティー・ラインといい、テームズ川南岸のウォータールー駅とシティ(駅名はバンク)をつないでいる。ロンドン最短、おそらく世界の大都市でも最短の地下鉄で全長2.4キロしかない、1898年開業のミニ地下鉄である。車輌もたった四輛しかない。駅も両端のウォータールーとバン

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大学入学の周辺 ──『異邦人のロンドン』番外編②

大学入学の周辺 ──『異邦人のロンドン』番外編②

 イギリスの大学が日本とどう違うか、いろいろと驚くことがある。学問とか組織の内容といった深い話ではなく、入学までの道のりだけでも日本や欧州大陸とはだいぶ違う。
 
 最初にびっくりしたのがイギリスの「学生ローン」だった。
 日本の「奨学金」との違いは豆腐・納豆論に似たところがある。トウフは豆の煮汁を型枠に納めたものだから「納豆」と、ナットウは豆を腐らせたものだから「豆腐」と書くべきだろうという例の

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テムズ川の泥をあさる──『異邦人のロンドン』番外編①

テムズ川の泥をあさる──『異邦人のロンドン』番外編①

 日本の川を見慣れた目でテムズ川を見ると、どっちへ流れているんだかわからないほどその流れは遅く、流れというよりは、たゆたいという表現が似合う気がする。プール・オブ・ロンドン(The Pool of London)というのはテムズ川のロンドン・ブリッジ近辺から下流を指す何百年も前からの表現だから、やっぱり昔からここは水溜まりみたいに見られていたのだろう。

 五月雨を集めて早し最上川、のような勢いが

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