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#001 「アナ雪」きっかけで北欧ロマンス移住【ノルウェー】/世界ニホンジン探訪~あなたはどうして海外へ?~

お名前:まさよさん
ご職業:吹奏楽教師
在住地:オスロ
出身地:栃木県

「アナ雪みてたら泣けてきた」中学教員時代

――日本では中学校で音楽の先生をしてたんですよね?

もともと大学では教育学部の音楽コースで歌を勉強して、そのまま地元栃木県の中学校で働いてました。ただ、日本の学校のコンサバティブ(保守的)な、なんか固い考えがちょっと合わなくて、ずっとストレスを抱えながら働いてたんですよね。

――あらま…。辞める決め手はなにかあったんですか?

一番「こりゃ、もうやめよう!」って思ったのは、職員旅行だったかなあ。当時、合唱部の顧問をしてたんですけど、ある年に職員旅行のリーダーになったんですよ。ただ、部活の合宿と職員旅行の日程がかぶってしまって、「わたしは職員旅行にいけないけど、リーダーなんでプラン立てはやり切ります」って言って、校長先生にも許可を得ていたんですね。でも突然校長先生に「そんなへっぽこな合唱部なんて放っておいて、職員旅行を全うしろ!」ってブチギレられて。は? 許可とってますよね? みたいな(笑)。なんで生徒達のための活動を、職員旅行のために自粛しなくちゃいけないんだよ! って感じで。なんかまわりも「校長の許しがなければ…」って言うし。その時に、いや〜私はこの世界についていけないなって思ったんですよね。色々溜まってたストレスがそこでドバッと押し寄せた感じで。あと、ちょうどそれくらいの時期に『アナと雪の女王』の映画がやってたんですよ。それも決め手になったかな〜。

――あのアナ雪??

そうそう。映画を観に行って、エルサが「ありの〜ままの〜姿見せるのよ〜♪」って歌ってるのを観て、私全然ありのままじゃないー! って(笑)。もう映画みながら号泣ですよ。なんか私、エルサと同じ状況なんだけど! みたいな。私もありのままになる! 仕事やめる! みたいになったんですよね(笑)しかも意図せずですが、アナ雪ってノルウェーを舞台にした映画だったんですよ。

オーロラと一緒に(左がまさよさん)

漫画みたいな恋愛を求めて

――先生をやめた後、なぜノルウェーに行き着いたんでしょう? 「アナ雪」の舞台だから?

働いてる時は全然恋愛とかできなかったので、なんか漫画みたいな恋愛、ロマンスを体験したい! っていう想いがあって、もうそれが1番の目的(笑)。それで学生時代から興味があったワーキングホリデーに行こうと思ったんです。

――すごいですね(笑)とはいえ、ワーホリは選択肢がいくつもありますよね。

以前オーストリアに留学していたことがあって、その頃にノルウェーを一週間くらいひとりで旅行したことがあったんです。そしたら、道ゆくノルウェー人がみんなめっちゃカッコよかったんですよ(笑)「やばい! カッコ良すぎる! この国どうなってるんだ!」って。それからいつか住んでみたいなって想いはあったんですよね。まさかの教員辞めるタイミングでノルウェーのワーホリが開始されたので、「あ、私を呼んでいる!」って思いましたよ(笑)。とはいえ、英語に自信がなかったので、フィリピンで英語の勉強をして、オーストラリアでワーホリをしてから、満を持してノルウェーへ行った感じですね。

――それで今のノルウェー人の結婚相手と出会うわけですね?

そうですそうです。現地の日本人が開催しているお茶会で出会いました。なんか話しているうちに「この人すごい面白いな〜、いいな〜」と思って、出会った翌日には「今日遊びに行っていいですか?」って連絡してました(笑)。もう好き好きオーラが止まらんみたいな状態で、次に会った時には「好きです。9カ月付き合ってくれませんか?」って伝えてました。

――すごい速さ(笑)でもそうか、ワーホリの期間がありますもんね。

そうそう。ひとまず残り9カ月いることは決まってるから、そのあとはどうなるか分からないけど、「あなたとは付き合いたい」って伝えたんですよね。それが交際のはじまりです。

パートナーのアイリックさんと

国民総出のパレード

――吹奏楽の先生になった経緯を教えてください

5月17日に行われるノルウェーの憲法記念日ですね。その日は国民総出でパレードが行われるんですよ。ものすごい数の吹奏楽団が出動するんですけど、それをみて「あれ? もしかしたらノルウェーで吹奏楽の先生になれるかも?」って思ったんです。もともと日本で音楽の教員になったのも、吹奏楽の顧問をやりたかったからなんですよ。でも、私が配属された学校は吹奏楽部がなくて、ずっとやりたいなあって想いがあったんです。そこから仕事を探しはじめました。

――憲法記念日のパレードってどんな感じなんですか?

「ノルウェーにこんなに人がいたんだ!」っていうくらい街に人がでてきます(笑)。しかも、老若男女みんな伝統衣装を着るので、国民総出のコスプレパーティーみたいになって面白いですよ。男性はスーツの人もいますが、女の人はほとんど伝統衣装を着てるんじゃないかな。みんな14歳になると伝統衣装をつくるんですよ。それを着て街にでるから、ものすごい盛り上がり。あと、第二次世界大戦中にドイツ軍に占領されて、ノルウェーの国旗を使うことを禁止されてた背景もあるので、この日には一斉にフラッグを振ってお祝いするんですよね。もう街中国旗だらけですよ。

憲法記念日のパレードの様子

――仕事は簡単にみつかったんですか?

ノルウェーの求人サイトで履歴書を送りまくりました(笑)でも、英語やノルウェー語で音楽を教えたことがないので、大変でしたよ。「『タッタタタ〜』じゃなくて『タッタラタ〜』です」みたいに歌でなんとか伝えながら面接をしてました(笑)そんなこんなで、最初にトロンボーンのインストラクターの仕事がなんとか決まって。ひとつ決まれば、門戸が開くので、そのあと指揮者だったり、ビカールっていう代理の先生としての仕事をもらうことができたんです。もう、ビザの期間ギリギリでしたよ(笑)。

日本の縦割りってすごいんだ

――吹奏楽を教える現場で、日本との違いを感じる瞬間はありますか?

日本はなんでも基礎を大切にするじゃないですか。サッカーだったら、まずはパスやシュートの練習をして、試合をするのは最後の1時間だけ、みたいな。吹奏楽でも、最初にロングトーンをじっくり練習したりして、そのあとに曲を演奏し始めたりするんですよね。でもこっちは、大人の吹奏楽団でも、ウォーミングアップは15分くらいで済まして、「はい、じゃ曲やりまーす」みたいな。え? これだけしかやらないの? って最初は驚きました(笑)。

――実践重視なんですね。生徒の雰囲気も違いますか?

いやあ、日本の縦社会はいい意味ですごいって思わされます。私ノルウェーでは、小学生に教えてるんですけど、一回ノルウェー人の同僚と日本の小学校を訪ねたことがあって、吹奏楽の教室にいったら、先生がいなくて。ノルウェーだったら先生がいなかったら練習にならないんですけど、日本は縦割り社会が生徒の中にあるじゃないですか。その日も、6年生がスーッと前にきて「はい、1,2,3,4!」って言ったら曲が始まるんですよ。「ええええ!」みたいな(笑)。これノルウェーの子たちにはできないですよ。すくなくとも私のクラスでは無理。ノルウェーでは子供たちの中にヒエラルキーが全然ないので、リーダーも決めない。だから先生がいなければ崩壊ですよ(笑)。

日本では言わなかった「you choose」

――文化の違いを感じることはありますか?

ノルウェーは同調圧力が全然ないんです。周りの目を気にしなくてもいい。「世間体」って日本ではよくあるじゃないですか。「世間体」って言葉をこっちで探すことすら難しい。

――「結婚とかどうなの? 最近」とかもなさそうですね。

こっちは全然そんなのないんですよ。親から「孫欲しいな〜」っていうプレッシャーくらいは少しあるかもしれないですよ。でも「あのお子さん40歳にもなって結婚してないんだって」なんてことは一切ないんです。あなたはあなたのチョイスで生きてるのね。シングルで生きるのもあなたのチョイス。そんな感じですよ。

――世の中的な正解みたいなのが少ないのかな。

そうそう。だから、子供とかに教える時に「you choose」みたいな言葉を使う機会がすごい多いんですよ。日本で教員をしている時は、あまりなかったと思うんですけど、こっちでは頻繁に使うんです。

家族形態と風呂文化

――住んでて驚いたこととかありますか?

これ本当に驚いたんですけど、吹奏楽でお子さんのレッスンが終わった時に、「私、Aの母親です。」ってひとりの女性が迎えに来たんです。そしたらその後に、他の女性が来て「すみません私、Aの母親なんですけど」って言われて…。え!?やばい!どうしよう!わたし、他の人に渡しちゃった!誘拐事件かもしれない!って、もう思考停止になってしまって…。そしたら「私セカンドママなんで!」って言われたんです。

――なるほど! 同性パートナー間でお子さんがいらっしゃるんですね。

こっちは同性婚が認められてて子どもも持てるので、それがもう普通なんですけど、私からしたら初めてのことだったんで。ある程度認識はしてたんですけど、いざこういうことが起きると驚きますよね。

――それって結構一般的な話なんですか?

そうですね。子供までいる同性カップルは少ないかもしれないけど、普通にパパが二人とかもいますよ。

――移住して、これキツいなあってことありますか?

いや本当、これ日本人ならではかもしれないけど、温泉がないのはキツいんですよね(笑)。バスタブすらない家も多いので。こないだ久しぶりに、こっちのスパに行ってみたんですよ。大きいお風呂で久々に「うお〜めっちゃくつろげるわ〜」って。同時に「早く日本に帰って温泉入りたいわ〜!」って思いました。

――スパも日本の温泉とは多少違いますか?

そうですね。水着着用で、男女混合で一緒に入るって感じですね。でも水着をつけなくてもいいので、スッポンポンで歩いてる人もいる。サウナは裸じゃないといけないので、みんなスッポンポン。でも慣れてきましたけどね(笑)。

――今後について教えてください

永住権を取る前は、職業の縛りがあったり、ビザの関係である程度の収入がないと滞在できなかったので、1日に3校ハシゴしたりする時とかもあって、これはキツイなって。3年住むと永住権を申請する権利が得られるんですけど、無事に取れたので、いまは収入を気にする必要がなくなった。職業の縛りもなくなるので、書道やイラストの先生もしてますね。そんな感じで、吹奏楽の先生をしつつも、残りの時間は日本の文化を伝えられるような仕事をしていければいいなと思ってます。

取材:2023年2月
写真提供:まさよさん
※文中の事柄はすべてインタビュイーの発言に基づいたものです

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聞き手

おかけいじゅん
ライター、インタビュアー。
1993年東京生まれ。立命館アジア太平洋大学卒業。高校時代、初の海外渡航をきっかけに東南アジアに関心を持つ。高校卒業後、ミャンマーに住む日本人20人をひとりで探訪。大学在学中、海外在住邦人のネットワークを提供する株式会社ロコタビに入社。同社ではPR・広報を担当。世界中を旅しながら、500人以上の海外在住者と交流する。趣味は、旅先でダラダラ過ごすこと、雑多なテーマで人を探し訪ねること。


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